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04_不動産の税金

アウトライン

1|不動産の税金の全体像

下記4種類がある。

1.不動産の[取得]にかかる税金

[不動産取得]税、[登録免許]税、[消費]税、[印紙]税

2.不動産の[保有]にかかる税金

[固定資産]税、[都市計画]税

3.不動産の[売却]にかかる税金

(譲渡所得として)[所得]税、[住民]税

4.不動産の[賃貸]にかかる税金

(不動産所得として)[所得]税、[住民]税

2|不動産を取得したときにかかる税金

1.不動産取得税

不動産を取得したとき(購入・贈与時、増改築時)に発生。なお、[相続]や[法人の合併]によるときは無し。

(1) 概要

課税主体:[所在県]([地方税])
納税主体:取得者
課税額:課税標準([固定資産税]評価額)×[4]%※。
※2023年度までは[3]%

(2) 課税標準の特例

土地について:[宅地]の場合は[50]%。
建物について:一定の[新築住宅]※1は課税標準-[1200]万円※2。
※1:床面積50~240㎡などの要件あり。
※2:1997年度以降に建った住宅の場合。

2.登録免許税

不動産の[登記]にかかる税金。

(1) 不動産の登記

登記には[所有権保存]登記、[所有権移転]登記、[抵当権設定]登記などがある。
①所有権保存登記
新築建物の購入時などに所有権を[最初]に登録するもの。
②所有権移転登記
不動産を売買したり、相続のときにするもの。
③抵当権設定登記
抵当権の設定時に行うもの。

(2) 登録免許税の概要

課税主体:[国]([国税])
納税主体:登記者※
課税標準:[固定資産税]評価額(抵当権設定登記は[債権]金額)
課税額:課税標準×税率
※売買時は売主と買主が[連帯]して納税義務者となるが、一般的には契約等により買主が負担。

(3) 税率の特例

個人が取得する[住宅]で、一定の要件(床面積50㎡以上、新築or取得1年以内など)に該当するものは税率の特例を受ける。
下記:標準税率(住宅の軽減税率)。
所有権保存登記:[0.4]%([0.15]%)
所有権移転登記:[2.0]%([0.3]%)※
抵当権設定登記:[0.4]%([0.1]%)
※売買の場合(宅地建物取引業者により一定の増改築がされたものは[0.1]%)。相続時は標準[0.4]%。贈与・相続時は軽減なし。

3.消費税

商品の販売やサービスの提供にかかる税金。不動産取引ではかかる場合とかからない場合がある。
消費税あり:[建物]の譲渡・貸付(居住用以外)、仲介手数料
消費税なし:[土地]の譲渡・貸付、居住用賃貸物件の貸付([1か月]以上)など

4.印紙税

一定の文書作成時にかかる税金([国税])で、契約書等に[印紙]を貼り、[消印]することによって納税する。売買契約では売主と買主双方の契約書にそれぞれ印紙の貼付・消印が必要。印紙や消印がない場合、[過怠]税が課されるが、その場合でも[契約]は有効。

3|不動産を保有しているとかかる税金

1.固定資産税

不動産を保有している場合、毎年かかる。

(1) 概要

課税主体:[所在市町村]([地方]税)
納税主体:固定資産税[課税台帳]に[1月1日]時点で登録されている人※
課税標準:[固定資産税]評価額
課税額:課税標準×[1.4]%(左記は標準税率。実際は市町村で決められる)
※売買があった場合、一般に契約などにより売主と買主の所有期間で負担額を按分し清算する。

(2) 課税標準の特例と税額軽減特例

住宅用地については課税標準の特例が、新築住宅については税額軽減特例がある。
①住宅用地の課税標準の特例
小規模住宅用地([200]㎡以下の[部分]):税額=(課税標準[/6])×1.4%
一般住宅用地([200]㎡超の[部分]):税額=(課税標準[/3])×1.4%
②新築住宅の税額軽減特例
住宅を[新築]等した場合で一定の要件を満たした時は、新築後[3]年間または[5]年間、[120]㎡までの部分について税額が[1/2]に軽減される。

2.都市計画税

都市計画事業等の費用に充てるため、原則として市街化区域内の土地および家屋の所有者に課される[目的]税(使途が決まっている税金)。

(1) 概要

課税主体:[所在市町村]([地方]税)
納税主体:[市街化]区域にある土地・家屋の所有者(毎年[1月1日]時点で[固定資産課税]台帳に登録されている人)
課税標準:[固定資産税]評価額
税額:課税標準×税率※
※税率は市町村で設定。ただし[0.3]%以下

(2) 課税標準の特例

住宅用地には課税標準の特例がある。
①住宅用地の課税標準の特例
小規模住宅用地([200]㎡以下の[部分]):税額=(課税標準×[1/3])×税率
一般住宅用地([200]㎡超の[部分]):税額=(課税標準×[2/3])×税率

4|不動産を譲渡したときにかかる税金

1.譲渡所得(原則)

土地や建物を譲渡(売却)して収入を得た時、[譲渡]所得として所得税が発生する。この場合の譲渡所得は[分離]課税となる。
譲渡所得=収入金額 - ([取得]費用 + [譲渡]費用)
取得費が不明な場合は収入金額の[5]%を取得費とすることができる([概算]取得費)。
譲渡した年の1月1日時点の所有期間が[5]年超のものを長期譲渡所得、それ以下の場合は短期譲渡所得という。
税率は長期で[20]%(所得税[15]※1 + 住民税[5])、短期で[39]%(所得税[30]※2 + 住民税[9])。
※1:別途、復興特別所得税[0.630]%が加算される。
※2:別途、復興特別所得税[0.315]%が加算される。

2.居住用財産の譲渡の特例

居住用財産(自宅やその土地)を譲渡した場合で一定の要件を満たした時は、以下の特例を受けられる。

(1) 居住用財産の[3000]万円の特別控除

課税譲渡所得=譲渡益 - [3000]万円
譲渡した居住用財産の所有期間の[短期長期]問わず適用可能。
控除後の課税譲渡所得がゼロとなる場合でも[確定申告]が必要。
居住用財産の軽減税率の特例(後述)と併用[可能]。
特定居住用財産の買換えの特例(後述)と併用[不可]。
主な適用要件は、
・居住用財産であること、
・配偶者や親、子などへの譲渡でないこと、
・居住しなくなった日から[3]年経過する年の12月31日までに譲渡していること、
・前年、前前年にこの特例を受けていないこと(3年に1回しか使えない)。

(2) 空き家の譲渡の特例

相続開始直前に被相続人の居住用であった家屋で、その後空き家になっていた家屋を一定期間内に譲渡した場合には、その譲渡所得の金額から最大[3000]万円控除できる。
※この特例は、2016/04/01~2023/12/31の譲渡に適用可能で、取壊して更地譲渡の場合も適用可能。
課税譲渡所得=譲渡益 - [3000]万円(特別控除)
相続財産にかかる譲渡所得の課税の特例(相続税の取得費の加算)※と[選択]適用になる。
※相続や遺贈により取得した財産を一定期間(相続開始翌日~相続税申告期限翌日以後[3]年経過日)内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を、譲渡資産の取得費に加算して譲渡所得を計算できるという特例。
主な適用要件:
・相続開始まで被相続人の居住用※であり、その後相続によって空き家になったこと、
・1981年5月までに建築された家屋であること、
・マンションなどの区分所有建物でないこと、
・相続開始日から[3]年経過する年の12月31日までに譲渡したこと、
・譲渡対価が[1億]円以下であること。
※2019年度以降の譲渡については「被相続人が要介護認定等を受けて相続開始直前まで老人ホーム等に入所」かつ「被相続人の老人ホーム等入所時から相続開始直前までその家屋を被相続人が一定使用していて事業用・貸付用・被相続人以外の居住用となっていない」場合は被相続人が居住用としていた扱いにできる。

(3) 居住用財産の軽減税率の特例

譲渡年の1月1日時点で所有期間[10]年超の居住用財産を譲渡した場合、[6000]万円以下の部分について[14]%(所得税[10] + 住民税[4] で復興特別所得税[0.21]%が加算)の軽減税率を適用。これは居住用財産の[3000]万円の特別控除と併用[可能]。
計算例:
取得費7000万、譲渡費用500万、譲渡収入2億の場合、
課税譲渡所得=2億 - 7000万 - 500万 - 特別控除3000万 = 9500万
税率(所得税+住民税)は
6000万以下部で10%+4%、6000万超部で15%+5%なので、
税額は
所得税=6000x0.10 + 3500x0.15 = 1125万円
住民税=6000x0.04 + 3500x0.05 = 415万円

(4) 特定居住用財産の買換えの特例

譲渡年の1月1日時点の所有期間が[10年]超で居住期間[10年]以上の居住用財産を譲渡対価[1億円]以下で譲渡し、新たに床面積[50]㎡以上の居住用財産を購入した(買い換えた)場合、譲渡益に対する税金を繰り延べる(次年度以降に持ち越す)ことができる。つまり、本来その年に発生した譲渡益は全額がその年度の課税対象になるが、その譲渡益を次年度以降の課税の対象にすることができる。たとえば旧居を5000万で売って新居を6000万で購入した場合、旧居≦新居なので譲渡益を繰り延べられる。旧居を3000万で買っていてその譲渡費用が200万なら、5000 - 3000 - 200 = 1800万円を全額繰り延べることができる。この特例は「3000万円の特別控除」や「居住用財産の軽減税率の特例」とは併用[不可]。また、譲渡益がゼロでも[確定申告]が必要。

(5) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

譲渡年の1月1日時点の所有期間が[5]年超、一定の住宅ローンがある等の居住用財産を譲渡し、譲渡損失が生じた場合、譲渡損失(住宅ローン残高 - 譲渡価格 が限度)とその年の他の所得とを[損益通算]することが可能。また、翌年以降[3]年間にわたり、その譲渡損失を他の所得から控除([繰越]控除)できる。ただし繰越控除を受ける年の合計所得金額は[3000]万円以下が条件。